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なんちゃって推理小説 森村小林サスペンス
『広島行きのぞみ13号 修学旅行喫煙事件 狙われたマドンナを救え!』第1話
新幹線は1両90席。1クラス43〜45人だとして2クラス乗れるわけか。
ひょっとして新幹線って、修学旅行のために1両90席あるのかなあ。
吸い込まれそうな秋の高い空を見ながら考えていた。
今日から修学旅行。
心配だった荷物検査も、校長のおかげで廃止になったので、道中無駄な時間を費やすこと無く楽しめそうだった。
なんといっても行きはマドンナの隣の席だからだ。
新横浜に着くと、裏手から不良の加藤が赤シャツに捕まっていた。
「赤シャツの奴、荷物検査廃止で苛ついてやがる。森村、お前も気を付けろよ」
加藤からほのかにタバコの匂いがした。
「タバコ持ってきてんのか?」
「あぁ?やべえからさっき捨てたわ」
何か問題にならなければいいなと思いながら、僕らは新幹線に乗り込んだ。
新横浜を出ると、席に着いてゆっくりしている奴はほとんどいなくて、みんな浮き足立っている。
僕もその一人で、お目当てのマドンナがトイレにいってるらしく、なかなか落ち着かない。
僕の席の周りには、マドンナ目当ての奴らが集まっている。加藤もその一人だ。
そんな時、赤シャツが僕らの5号車に乗り込んできた。
赤シャツ、嫌な奴だ。
生活指導で柔道部の顧問。何かやらかしたらすぐ殴る。
空手部の主将の僕はあまり殴られたりはしないけど、あいつは女子にも手を出す。
荷物検査廃止を最後まで反対していたのも赤シャツだけだったって言われてる。
出発早々、僕の嫌な予感は的中した。
「誰だ!トイレの中でタバコを吸ったのは!」
すごい剣幕で僕らを睨みつける赤シャツ。まっしぐらに僕らの方にやって来た。
「お前か清水!お前が俺の前にトイレから出るのを見たぞ」
「わたしじゃありません!」
マドンナは顔を覆い泣き出してしまった。
「本当かね、君が戻って来た時に、タバコの匂いはしなかったがね」
担任の十津川先生は真っ先にマドンナをかばった。しかし僕はマドンナの秘密を知っていた。
マドンナこと清水薫子。容姿端麗、文武両道、清廉潔白。
男子のみならず、女子にも人気のある彼女は先生からも評判がよく、
すでに六大学に推薦入学が内定しているという噂もあった。
でも僕は、彼女が隣街のゲームセンターでタバコを吸っていたのを、見たことがあった。
「誰がやったかはわからないが、とにかくトイレを見てみましょう」
十津川先生は元刑事。いつもベタな推理で問題を難しくするのだが、この判断はさすがだと思う。
確かにトイレの中にはわずかに煙が立ちこめ、匂いも残っていた。
「間違いないでしょう。タバコを吸っていたのは」
「誰か清水の他にこの辺にいたのを目撃してないか?」
すると一番前のトイレ側にいた生徒会長のイソッフが証言した。
「確か子供の遊んでる声がしました。それ以外は見てません」
確かにグリーン車には家族連れが乗っていくのをみんな見ていたので、
「さすがに子供は吸わないでしょう。そうするとやはりこちらの生徒の誰か、ということになりますねえ」
赤シャツは明らかに僕らのクラスを狙っていた。
問題児が多いとはいえみんなが楽しみにしているこの旅行に、こんなことをする奴なんているはずがない。
すると、考え込むみんなの視線がある一人に向けられていた。
「ニコチン。まさかお前か?」
「ええっ!オ、オレじゃないっすよお!」
ニコチンこと何だったっけ、そう俵堂ひでき。あだ名の通り誰もが知っているヘヴィスモーカー。
だけど最近具合が悪いとか言って吸ってなかったと思う。
それに小心者で、こんなときにあんな所で吸うわけもないのだけれど、と思っていると赤シャツが、
「だいたいニコチンって言われてる自体が停学もんなんだお前は!お前だな、お前に決まってる。
持ち物検査だ、全部見せろ。お前じゃなかったら前から全員、犯人が見つかるまで荷物検査だ!」
騒然とする車両。マドンナはまだ顔を上げれないでいる。
「ちょ、ちょっと待って下さい」
ニコチンの隣にいた渡辺謙太郎がニコチンが犯人じゃない理由を説明し始めた。
「・・・そういうわけで、こいつは今タバコを吸っちゃあいけない体なんですよ。まだ未成年のくせに、医者からドクターストップがかかっているんです!」
想定外の理由に全員とまどっていたけど、僕はニコチンが犯人じゃあないと思っていたのと、
ばかだなあと思って、つい吹き出してしまっていた。
「するとやっぱり荷物検査だな」
赤シャツはますます嫌みが増し、僕らを追い込んでいく。
「まあ、待って下さい。荷物検査廃止は校長が決めたことですし、生徒のプライバシーの侵害になりますから。
どうしても見つからなかったらにしましょう」
十津川先生が赤シャツを制止すると、僕はさっきまでいたイソッフがいないことに気が付いた。
「おい!磯崎はどこに行った。あの野郎真面目くさったああいうやからが一番くさいぞ」
「そういえば先生イソッフの奴、荷物検査って聞いてから急に焦ってましたよ」
そう言うと加藤はイソッフの席の周りを見渡して叫んだ。
「先生!イソッフのリュックもないです!」
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