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僕にとって彼女は高貴な存在です。
そしてその気高さは、真っ先にある女性を思い出させます。
三島さんの小説『憂国』の将校の夫人の麗子さんです。
音楽も文学と同じく(恥ずかしながら)愛と死の光景、
エロスと大義との完全な融合と相乗作用を期待する唯一の至福であると思います。
人生のなかでそれを得ることは出来ないから皆音楽や文学に至福の時の共有と増幅を求めるのです。
彼女の音楽は良いところも悪いところも凝縮したエキスのような音楽とでもいいましょうか。
従順だけどミーハーなところもあって、でもそれが道徳的に守られているように感じられます。
『憂国』のなかの将校の夫人は白く厳かで力強い拒否の潔らかさを示しながら、
一旦受け容れたあとでは、塒(ねぐら)の温かさを湛えます。
彼女の音楽も同じような感覚を覚えます。
彼女の音楽は他の同期の「文学系」と呼ばれるアーティストらと違って
その境界と本質とをしっかりと見極めることができていると思う。
ただ言いたいことを(伝えたいこととは違う)楽器の音色に合わせて言葉を強要するのとは違う。
彼女は楽しませることを望んでいる。音楽の深層はそこにあるのではないでしょうか。
林檎ちゃんといえば新宿、歌舞伎町、山手通り。
山手通りを新宿方面へ松見坂から旧通りとの立体交差を上ると、オゾンから高層ビルが群れをなす。
そんな時彼女の「罪と罰」を聞こうと沈む夕日をバックミラー越しに追いながらCDを入れようとした時、雷鳴とともに大粒の雨が落ちて来た。
僕はふと気が変わって、「群青日和」をかけた。
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| 椎名林檎 |
98年夏「歌舞伎町の女王」でまさにサブカルの女王として崇拝され、99年「無罪モラトリアム」で一気にメジャーへと登り詰める。
その後の2作を経て椎名林檎としての活動を休止。
現在は東京事変として超々一流のミュージシャンとともにバンドとして活動している。
今回のイラストはマイフェイバリットアーティストの椎名林檎さんということもあり、一つの文章からイメージしました。
「東京の冬の夕空は水色に澄んで、彼女の端正なプロフィル(横顔)が、水色の遠い夕空をバックにして、あのルネッサンスの頃のプロフィル画のようにあざやかに輪郭が区切られ浮かんで,それは何の色気でも無く、欲でも無く、ヒュウマニティという言葉はこんな時にこそ使用されて蘇生する言葉なのではなかろうか。」
(太宰治『斜陽』より) |
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(文&イラスト: special source モリソン小林)
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