ホーム > モノ作りの現場から > special source モリソン小林 #027


宮沢賢治の小説で、「注文の多い料理店」というのがあります。
最後にとんでもないことになるってわけではなくて、お店を作るということは
たくさんの注文があって当然なんですよね。

ぼくらはいつも、そのひとつひとつを確実に叶えるよりも、
オーナーさんと一緒に考えていくことで、ひとつひとつの注文を共同で実現していくわけです。
それは無理なことでも「やって良かった」と思うのと、
「やっちゃったけどどうしよう」と思うのとをプロセスの中で、
判断するために必要なことなんだと思うのです。



目黒にある「GASA」という洋服屋さんです。
基本的にファッションデザイナーというのは、
僕らよりも確実にセンスがいいです。
バイヤーさんもまた然りです。



彼らの創造力というのは、
静と動を絶妙に併せ持った宇宙というか、
いつでも地球を止めたり、動かしたりできるかのような
力を持っていますね。
ちょっとおおげさですかね。



出来る限り手作りすることは、
お店の雰囲気に大きな影響を与えます。
いつも来ているような感覚をお客さんに与えるには必要ですが、
がんばった感が出てしまったらアウトだと言われます。

服や小物などオーナーの考えを理解する必要はありますが、
彼らのもの作りのプロセスを理解するのが先だと思うのです。




「GASA」はガサの魅力だけで、お客さんが来るお店です。
ガサにあるひとつひとつのものが優しいんです。
こういったお店で大切なのは、
変な「見せ場」なんて考えないことですね。




新しく飲食店を持とうとしてる人の中で、
一番多いのは「カフェ」ではないでしょうか。
池袋にある「PAUSE」というカフェも、
ROUGHTOYSというおもちゃを扱う会社のオーナーさんが
初めて手掛けた飲食店です。

「ショーケースにおもちゃを並べて、
それをお茶しながら見てもらいたい」というのが注文でした。
オーナーさんはとても丁寧な人で、ゆったりしてる感じなので、
そんなオーナーさんのような限定したゆったり感
みたいなのを出せたらいいなと思いました。




カフェに必要なのは、お客さんが絶えずいること。
でも溢れるような感じではまずいみたいで、
逆の閑散としていて、長く寛げすぎてもまずいんですね。
人が寄って来るには、プリミティヴな素材をいくつか組み合わせて、
素朴でもある程度のシャープさみたいのがいいんですかね。

「PAUSE」さんは全部お任せと言われて出来たお店ですが、
オーナーさんの「物腰」がお店作りに反映されるという
めずらしい一面があるカフェです。

お店を作る時にはいつも、現場に行ったり来たりしてる間に
だんだん出来上がってしまうのが寂しい、
という気持ちになってしまいますね。


時には手を「機械のように」使い、時には「意識を預けて」使う。
正倉院などを補修する宮大工が
NHKアーカイブスの中で言っていました。

僕らは歴史に残る建物なんて作ってないのですが、
この言葉のもつ意味は深いですね。

お店作りでも大切なことですね。



今年もあと半月ですね。なにはなくとも忙しいのではないでしょうか。
人と会う機会が多いのもこの時期ならではですね。

そんな折、こんな疑問で盛り上がりました。「侘び」と「寂び」についてです。
いろんな見解があったのですが、僕もこの日本特有の美意識について、良く理解出来てはいませんでした。
そこで、いろいろと調べてみました。

「侘び」と「寂び」は茶道の奥義だそうで、千利休が「侘び茶」と「寂び茶」を極めて、
茶道を大成してからのことだそうです。
二つの相違点はとても微妙で、わずかなニュアンスの違い、があるくらいみたいです。

まず「侘び」とは、質素な中に統一感や秩序の美があること、だそうで、
たとえば、古木でひねこびた椿で小さな花をつけるのを「侘助」と呼んだり、
古色の落ち着いた茶入れに「侘助」と銘をつける、といった具合だそうです。
僕ら現代のファッションでも、つぎやつくろいが醜くくなくて、
それなりの調和の美をなしている、というのが「侘び」のようです。

さて、「寂び」はどうかというと、その名のとおり寂しい中で醸し出される「孤独感」の美意識、
というものだそうで、たとえば、苔が蒸して落葉の積むにまかせた庭のことを「寂庭」と言うようで、
陶器の世界では、伊賀の信楽の古いつぼのように、昔農具として使っていたようなものを花入れとした時、
「大寂者」と呼ぶ、といった具合のようです。

僕ら若輩者には、なかなか奥行きがありすぎて、うまい使い分けができるはずもないですね。

茶の湯の家元の千家では、この「侘び」を説明するのに、新古今和歌集の次の三夕歌をあげていました。


さびしさは その色とても なかりけり
 まき立つ山の 秋の夕ぐれ
寂蓮法師
こころなき 身にも哀れは 知られけり
 しぎ立つ沢の 秋の夕ぐれ
西行法師
見わたせば 花も紅葉も なかりけり
 うらの苫屋の 秋の夕ぐれ
定家朝臣


この三首の歌意を味わうことによって、「寂び」の精神を自分なりに、会得するのだそうです。

季節はもう秋をとっくに過ぎて冬ですが、地球温暖化の進む現代の僕らにとっては、
今ぐらいからが、なんとなく「侘び」「寂び」を感じる季節ですね。
そんなことに耽りながら、紅白を見て、ゆく年くる年を見るんですかね。

皆さんも身体に気を付けて、良い新年をお迎えください。
(おもち食べ過ぎないように!)



モリソン小林 (1969生)
2001年スペシャルソース設立。
金属、木工、張り、ガラス、樹脂、古布、陶芸と頼まれて出来ませんと言うのが嫌で、身に付けられる技術はすべて会得したいと日々精進を重ねてます。 デザイナーや建築家との共同作業も、感性を高めるために重要な要素になっています。
「iA」にて連載中のマンガ「マーヤさんの日記」もよろしくです。


#049 2008.10 連載マンガ「マーヤさんの日記」
#048 2008.09 KIDS WORKSHOP IN SUMMER 2008
#047 2008.08 しばらく彫ってみます
#046 2008.07 7月、天の川、聖なるもの、そして初めての彫像
#045 2008.06 西麻布ワインバー BROS
#044 2008.05 現代手工業という新語
#043 2008.04 antos
#042 2008.03 the park hunter plus
#041 2008.02 PESCADERIA 銀座店
#040 2008.01 黄昏のレンガ貼り/日本の教会をたずねて カトリック与那原 聖クララ教会
#039 2007.12 伝えられない、ものづくりに大切なこと
#038 2007.11 現代手工業乃党のミーティング/レーザーで花の模様を
#037 2007.10 干支は縁起もの/2007沖縄慰安旅行
#036 2007.09 愛媛からの指令
#035 2007.08 石の上にも三年
#034 2007.07 銀座にて
#033 2007.06 たくさんのご来場ありがとうございます
#032 2007.05 六月、紫陽花、梅雨、誕生日。そしてまた、展示会
#031 2007.04 日本の教会をたずねて3
#030 2007.03 アンティークドア / 百人一手
#029 2007.02 百人一手 現代手工業乃党選集
#028 2007.01 デザイナーとの共同作業 シゲジ・デザイン・ワークス 畠山滋二 / 「侘び」「寂び」の違いについての私見
#027 2006.12 共同作業でお店は出来る / 「侘び」「寂び」の違いについての私見
#026 2006.11 まわしてみて、と言われて。
#025 2006.10 日本の教会をたずねて2 / 慰安旅行
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#023 2006.08 暑くて忙しいお盆です。こんな時は漫画喫茶が近くにあったらなぁと、想う夏。
#022 2006.07 ステンドガラス
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#014 2005.11 楽しい陶芸
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#012 2005.09 レリーフ製作
#011 2005.08 椅子の機能寸法
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