
上:糸ノコで荒切り
下:熱曲げして、削り出し前

様々な道具で削り出して出来たアクリル製の「茶杓」

櫂先のディティール

茶道具はお手前の時でも大事に丁寧に扱うから、繊細な造形も提案できる。

茶杓の筒。旋盤加工で素晴らしい精度で上がってきた。

透けて見えるところが「わび」の美しさに通ずると思います。


それぞれ「銘」をつける。
形状やコンセプトも違う。

岡田氏によるお手前

櫂先の抹茶が美しい。
茶の世界に「不足の美」という言葉があります。
不足を不十分とせず、その中に美を見出す。
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以前に映像作家とアクリルの掛け軸を作った事がありましたが、
その茶会で出会った茶道家の岡田氏の為に
「茶杓」をアクリルで作りました。
茶杓とは抹茶をすくい取るさじのことで、
竹で出来ている物が多いのですが、
他にも象牙など動物の角や金属製の物もある。
いつもの事だが、初めて作るものにドキドキはつきものです。
岡田氏から参考にと2種類の茶杓をお借りし、
先ず見てそして触る。
竹製の茶杓は表皮の目や節をそのまま活かし、
先のほうは炙って曲げている。
象牙の茶杓は、まさに削り出している。
竹の自然の表情を真似てもフェイクになるだけなので、
象牙の茶杓のフォルムを参考に削り出して作ることにした。
抹茶をすくう部分を「櫂先(かいさき)」、
後ろの末端を「切止(きりどめ)」と言い、全長は約180mm。
アクリルらしさ、使う意味をどう表現するか・・・
イメージは固まりました。
先ずは全体の形を描いて、
アクリル板を糸ノコで荒切りをする。
櫂先の部分と、全体に景色を付けるため熱で曲げる。
この段階でほぼ全体像が決まる。
後はイメージした形を目指して、
ヤスリ、ナイフ、サンドペーパーを使い少しずつ削って行く。
その中でも抹茶を受ける櫂先のくぼみが難しい。
全体の美しいラインも大切だが、
見せ場は櫂先のディティールだと決めていた。
アクリルならではの繊細な表現が出来る。
ここはルーターを使って加工する。
どんなに美しい茶杓が出来ても、
棗(なつめ)と言う抹茶が入っている丸い容器の上に置いた時に、
落ち着いていなければならない。
バランスが悪ければ落ちてしまう。
茶会のお手前に支障をきたすことは、あってはならない。
道具だから使い勝手が一番重要だと感じている。
茶杓を作れば、それを保護する「筒」が必要です。
茶杓と筒はセットと言って良いでしょう。
従来の筒は竹製で茶杓がすっぽり入り
上から蓋で閉じるかたちなのですが、
作りをあえて変えてみました。
肉厚のキャストアクリルパイプを旋盤加工で
段ギリに加工して「印籠式」にした。
熟練の職人さんにお願いして、
「シュっと入って、抜けない様に」と伝え、
感覚でお願いしました。
クリアランスは100分の1mm〜2mmだと思います。
職人さんも分からないと言ってました。
フタを接着していざハメようとすると、
あまりにも密閉度が高く空気圧で入らない!
それは呑み込みのわきに小さな穴を開けて解消しましたが、
フタを閉めれば、水に浸けても全く中に入ってこない(防水)、
凄い筒が出来てしまいました。
日本の技術は凄い。町工場レベルでですよ。
出来た物は左の写真の通り、
茶杓も筒もフロスト仕上げでフィニッシュした。
磨いて光らせるより、アウトラインが綺麗に見え、
手仕事がしっかり伝わる。
何より櫂先に付いた抹茶が美しいのだ。
ちなみに基本的に同じ物は作らないし、作れない。
実は岡田氏の為に作った茶杓は先月のあたまに納めていて、
今月の記事の画像は彼の師匠である表千家師範、
松本宗紅氏の為に製作した茶杓の画像です。
茶会とは保守的で一部の人々の文化とかでは無く、
茶道=茶を通して人の生き方を説く、
日本文化の原点であり日本人であれば
誰にでも通ずるものであると教えて頂き、そう感じました。
茶の湯の心は、一期一会をその時間を共有し
有意義なものにしようという、もてなしの心である。
僕はまだ勉強中で、作法も何もわかっておりません。
お手前、作法、道具全てに意味があるのですが、
こうあるべきと言うより、
どうあるべきなのかと考えられるようになれたら、
もっと良い道具が作れるようになれると思う。
デザインやモノ作りをやって行く中、
「日本人らしさって何だろう」って問われて来ると思う。
それは見た目に分かることでは無くて、
思想や姿勢だったり・・・
見えるものではなく、発するもの、感じさせるもの。
そういうものの答えが伝統文化に隠されている気がしています。
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